「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」が平成28年12月14日法律第105号として公布されました。
義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律の公布について(通知)
この法律は、「教育機会の確保等に関する施策を総合的に推進する」ための基本指針を文部科学大臣が定めることとしています。そして、国及び地方公共団体が講じ,又は講ずるよう努めるべき「不登校児童生徒等に対する教育機会の確保等に関する施策」等について規定しています。
基本理念
1 全児童生徒が豊かな学校生活を送り、安心して教育を受けられるよう、学校における環境の確保
2 不登校児童生徒が行う多様な学習活動の実情を踏まえ、個々の状況に応じた必要な支援
3 不登校児童生徒が安心して教育を受けられるよう、学校における環境の整備
4 義務教育の段階の普通教育に相当する教育を十分に受けていない者の意思を尊重しつつ、年齢又は国籍等にかかわりなく、能力に応じた教育機会を確保するとともに、自立的に生きる基礎を培い、豊かな人生を送ることができるよう、教育水準を維持向上
5 国、地方公共団体、民間団体等の密接な連携
国及び地方公共団体は、以下の措置を講じ、又は講ずるよう努める
1 全児童生徒に対する学校における取組への支援に必要な措置
2 教職員、心理・福祉等の専門家等の関係者間での情報の共有の促進等に必要な措置
3 不登校特例校及び教育支援センターの整備並びにそれらにおける教育の充実等に必要な措置
4 学校以外の場における不登校児童生徒の学習活動、その心身の状況等の継続的な把握に必要な措置
5 学校以外の場での多様で適切な学習活動の重要性に鑑み、個々の休養の必要性を踏まえ、不登校児童生徒等に対する情報の提供等の支援に必要な措置
五 教育機会の確保等に関するその他の施策(第16条~第20条)
1 実態把握及び学習活動に対する支援の方法に関する調査研究等
2 国民の理解の増進
3 人材の確保等
4 教材の提供その他の学習の支援
5 学校生活上の困難を有する児童生徒等からの教育及び福祉をはじめとする各種相談に総合的に対応する体制の整備
つまり、不登校児童生徒が「安心して教育を受けられるよう、学校における環境の整備と支援を行う」こと。「学校以外の場における不登校児童生徒の学習活動」、その心身の状況等の継続的な把握に必要な措置を講ずることが法律で定められました。
そして、法の採決に当たっては,衆議院文部科学委員会及び参議院文教科学委員会において、児童生徒の意思を十分に尊重して支援が行われるよう配慮すること、不登校というだけで問題行動であると受け取られないよう配慮すること,例えばいじめから身を守るために一定期間休むことを認めるなど児童生徒の状況に応じた支援を行うことなどの附帯決議が付されています。
教育機会確保法には、2つのポイントがあります
1つ目は「学校を休んでもよい」ということです。
この法律を根拠に保護者は堂々と「学校を休ませる」と学校に言うことができます。
同時に学校の教員も「学校を休んでもいい」と認めることもできるようになります。
「学校を休むことは法律でも認められているんですよ。」と言うことができるのです。世間では「学校に行かない子は悪い子、特別な子」と見られがちですが、学校に行かないことも選択肢であると「法律」で決められたのです。
何が何でも学校に行かなければならない、学校に来させなければならないというのではなく、法律で学校を休んでもいいと決められました。
2つ目は「学校以外の場の重要性」を認めたことです。
学校だけが学習の場ではなく、フリースクールやその他の機関や施設での学習の場を作ることが重要だということで、子ども個々の実態に応じた学習環境を整えていくことが求められています。
海外では家庭で親が勉強を教えることを義務教育の一環として認めている国もあります。
さらに教育機会確保法は、自治体とフリースクールなどとの連携も求めています。すでにそのような取り組みをはじめているところも出ています。
この2つを実際の場で活かすことのよって子どもたちを取り巻く環境を変えることにつながります。
これを機に、「不登校の子どもたちも、そうじゃない子どもたちも、すべての子どもたちが安心して学べる環境を作り上げる」という真の目的を共有できるような連携が求められています。
これについては、こちらの「教育機会確保法 不登校対策は」(くらし☆解説)で分かりやすく説明してあります。
学校の教員が教育機会確保法を知らない?
しかし現実には、教育機会確保法を知らない教育関係者も教員もいます。
子どもに関わる仕事をしていて教育機会確保法や文科省からの通知を知らないというのはあまりにも無責任です。
これは都道府県教育長宛に自治体や学校で対応するように通知されています。
鳥取県でも知らない教員も行政担当者もいます。
だから、広く知らせていく必要があります。
教育機会確保法ができたのは2年前です。2年前ですよ。
それを知らないばかりか、「学校を休むと進学、卒業ができない。」「将来がない。」という学校長や教員もいることも事実です。
実際はそうではなく、小中学校に1日も行かなくても15歳の3月には就学期間を終え、すべての子どもが中学校を卒業できます。
さらに高校、大学進学もできます。
その後も就職して働くこともできます。
中学校に行っていなくても高校に行けますか?進学できますか?にも書きましたが、中学校に行っていなくても、公立私立すべての高校で受験することができます。
さらに、文科省は「学校以外の学習活動の重要性」もいっています。
大切なことは、子ども本人の意志です。子どもの思いをしっかり聴くことです。
学校や世間の間違った認識、不登校児童生徒に対する誤った見方考え方を正していく必要があります。
教育機会確保法や文科省の通知を教員採用試験でも面接でも問うたらいいと思います。
これについても不登校についての教育行政との意見交換会や子どもの学びと不登校を考える鳥取県民のつどいでも取り上げる予定にしています。