教育

鳥取県で「不登校児童生徒への自宅学習支援事業」が9月から実施されました

投稿日:2019年9月3日 更新日:

ホームスクールで学んでいる子どもの保護者の方が「自宅でのICT学習が出席扱いとして認められた」という報告をされる事例が少しずつ増えてきました。
実はこの「不登校児童生徒が自宅においてIT等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について」という通知は、平成17年7月6日に「各都道府県の教育長宛」に出されています。今から14年も前です!
しかし、それが浸透していません。
その大きな理由は「文部科学省が定めている出席扱いになるための6つの条件」があるためです。自宅学習を「出席扱い」にするための条件はかなりハードルが高いのです。
不登校児童生徒が自宅において IT 等を活用した学習活動を行った場合の指導要録上の出欠の取扱い等について(文科省通知) (PDF)
不登校などにインターネットの自宅学習支援 鳥取県教委で「鳥取県教育委員会はこのほど、不登校や引きこもりの子供らを対象に、インターネットを活用した自宅学習支援を始めることを決めた。6月補正予算案に盛り込み、今年度は9月から運用する方針。」と書いていましたが、鳥取県ではようやくこの9月から県内の不登校児童生徒15人を対象に自宅でのICT学習を始めることが決まりましたが具体的なことはまだ協議中とのことです。
鳥取県には不登校児童生徒が900人以上いますが、この対象はたった15人です。
ただし、この事業は不登校児童生徒900人のうち、学校にほとんどいっていない子が対象です。
「出席扱い」について保護者が地道に要望し続けないと認められないっておかしいです。
このようなことが「特別な事例」として捉えてはいけません。保護者がわざわざ学校に出向いてお願いしなくても、当たり前にされなければいけません。
子どもたちが学びやすい環境を整えていくのは私たち大人の責任です。
自宅でのICT学習や学校以外の学びの場に行くことが当たり前にならなければいけません。そのときにようやく「不登校」という言葉がなくなります。
この他にも文科省は自治体の長宛にいろいろな通知を出しています。
しかし、それが実施されるまでにはかなりの時間を要します。
その中には、実際には学校現場では難しい要求もあります。
お金や人の問題が大きいです。
現実としては、議会で文教予算を増やすことが必要です。
教委や学校はその厳しい予算の中でやりくりしているわけで、この事業もその中の一つで、1年間限定の実験的な取り組みです。
通知が出されたのは14年前のことですが、ようやく実験的でもあっても取り組みを始めたことは評価できます。
この件についても鳥取県民のつどいで話題に取り上げます。

「不登校児童生徒への自宅学習支援事業」開始の会に参加

9月12日に「不登校児童生徒への自宅学習支援事業」開始の会に行ってきました。
この事業は、主に自宅で過ごしている児童生徒に対して、「すらら」という自宅学習支援システムを使いインターネットを活用した在宅での学習支援を行うもので、県内3か所の教育支援センター(ハートフルスペース)に自宅学習支援員を配置し、市町村教育委員会・在籍校・保護者と連携しながら支援を進めます。
開始年度の対象者は、小・中学生及び高校生、定員は15名(東・中・西部各5名)です。
この中の高校生はすでにスタートしていて、小中学生は9月中に始めるとのことでしたが、9月に入ってからすでに申し込みが始まっているようで、今年度は地教委と学校を通じてになります。

県の事業として取り組んでいることはかなり評価できる

「対象はたった15人?」と書きましたが、これでもスゴいことなんだと思うようになりました。鳥取県として取り組みを始めたことは大きく評価できます。
この事業はまだスタートしたばかりです。県教委もようやく予算を獲得してなんとか実施ができることになりました。
15人はまだまだ少ないですが、県の事業として鳥取県が先進的に取り組むことは全国的に広げる前例になります。
県教委としては、もちろん今後さらに人数を増やしていく計画があります。そのためには予算確保が不可欠であり、私たち県民の理解と協力、そして県教委への応援も必要です。これは、私たち県民がいっしょになって取り組む事業です。
議会で教育予算を増やす必要がありますから、議員にも理解してもらい具体的な予算化と人材養成も不可欠です。
県教委も予算も人材も少ない中で頑張っています。それがようやく形になりました。
私はこの事業を大きく評価していますし、今後の広がりを期待しています。

自宅学習が実現できるまで

県の担当者はそれまでに個別に丁寧な対応をしています。
今回は、対象者を絞って条件に合う児童生徒に対して一人ひとり対話をしていく中で本人と保護者の了解をとって決めたそうです。機器も無償提供し各地区には支援員を配置し、同時に訪問支援も行っていきます。
文科省から通知は出したものの、肝心な予算もつかない、人材もいない、その人材を育成できる人もいない現状でスタートする事業なのです。こんな現状でスタートする事業なので、民間の業者に任せるのも分かるような気がしてきました。
eラーニングはいろいろあります。在宅学習の方法もたくさんあります。
ただし、有料のものが多いのでそれも課題です。だから、無料で利用できる鳥取県教委の取り組みは評価できます。
というか、本来義務教育は無償なので、国や自治体はすべての子どもの教育の場の設置義務があります。「努力義務」ではなく「設置義務」です。そのためには人材の確保、機器の整備など課題は多いですが、県としては今年度の取り組みを前例としてさらに広げていく考えがあります。向こう3年間は予算がついているので順次対象者を増やしていく計画だということです。
今年度は始まったばかりでモデルケースとして対象者を限定した取り組みですが、今後多くの子どもたちが利用できるように広がっていくよう期待しています。
情報が入り次第、このブログやFacebookなどでもお知らせしていきます。
不登校生の出席扱いについて(すらら)
「ICT等を活用した自宅学習支援事業について報告」(PDF)(鳥取県教育委員会)
この会の様子は9月25日の毎日新聞や読売新聞にも載っています。
不登校生、孤立させない ICTで学習支援 鳥取

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