昨年も「本人の価値観にチャンネルを合わせる」という講演会に参加しましたが、今日は再び、米子であった谷口仁史さんの講演会に行ってきました。
ひきこもりで48%の人が学校や教育委員会、相談機関や医療など複数の専門機関の支援を受けている。しかし、そのうち63%が失敗体験をしている。
そして、谷口さんのところにはそれらの機関への怒りや憎しみのメールが届いているそうです。
実際のメール内容も見せてもらいましたが、相当な恨みを抱いていることが伝わってきます。
そこには、専門機関がひきこもりの当事者のニーズに応えきれていない実態があります。
ではなぜ行政や専門機関の支援は“失敗”し続けるのか?
支援者と当事者の間に横たわるギャップ、専門機関組織としての「形」はあっても、それが縦割りで切られ、お互いに情報共有ができていない、総合的で有機的な連携がとれていないことが要因にあります。
行き場がなくなりどうしようもない状態になってようやく勇気を振り絞って相談窓口に行ったにも関わらず、当事者のニーズと支援する専門家とのミスマッチによって、これまで以上に本人を傷つけ、ひきこもり状態を長く続けざるを得ない状況へと追い返している現実があります。
「専門家」に協力を求めたり連携しようにも、お互いが組織としての主義主張がぶつかり合い、ひきこもり当事者の思いとは離れた支援となっている場合もあります。
佐賀県のNPOスチューデント・サポート・フェイスの取り組み
そこで、佐賀県では「一人、ひとつの組織でできることの限界を謙虚に認め」、行政と民間、NPOが一体となって「緩やかな組織」作りを進め、共有できる部分を共有し、幅広いネットワークを作ると同時に人材養成も行い、「誰が、どのタイミングで、どこで、どのように関わっていくか」という支援プログラム作成を進めてきたということです。
そして、本人の不安と困っていることに絞って、「一番理解のある人」とのつながりを作りながら継続した対応をしているとのことです。
支援者の側に当事者の存在が欠けているのではないか?
親や関係者が勝手に決めたゴールに向かわせているのではないか?
なんとかして社会の一員に当てはめようとしていないか?
狭い範囲内での条件付きでの社会参加を求めていないか?
「してもらう支援」「してあげる支援」ではなくもっと自由に生きたらいいにも書きましたが、「専門家」といわれる支援者はちゃんと当事者のことを分かっているのか?
専門家や支援者は、立場での対応はしていても、そこには当事者の存在が欠けているのではないか。
専門家や支援者の「見立て」が必ずしも当事者の気持ちとしっくり合っているとは限らない。というか、支援者主体の支援になっていることが問題なんです。
そして、「解決」の姿も支援者が確定することではなく、当事者の自己決定によるものでなければならない。
不登校・ひきこもりは個人を追い込んでいる社会に問題があるという見方が重要です。
「寄り添う」とはどういうことか、今日の話を聞いて改めて考えることができました。
今日の講演には「専門家」と呼ばれる人たちが多く参加していたので、鳥取県でもこのような「本人に寄り添った」支援ができる連携が進んでいくことを期待しています。
NHKプロフェッショナル「寄り添うのは傷だらけの希望」谷口仁史
こちらからNPOスチューデント・サポート・フェイス(S.S.F.)の資料がダウンロードできます。
アウトリーチ(訪問支援)を実践するNPOが考える一億総活躍社会の実現に向けた子ども・若者支援改革(PDF)
~どんな境遇の子ども・若者も見捨てない!社会的孤立・排除を生まない総合的な自立支援体制の確立~