教育

「不登校の理由は先生との関係」子どもと学校との回答に16倍の開きがあった!

投稿日:2016年10月14日 更新日:


不登校になる要因は、ズバリ!
子どもが学校に適応できないためではなく、学校が子どもに適応できないためです。
なので、学校環境が変われば不登校は改善されます。
というか、学校へ行くことも学校へ行かないことも選択肢なのですから、子ども個々のニーズに合った環境を作っていくことが唯一の改善方法なのです。
既存の学校では子どもに適応できなくなっているのですが、相変わらず子どもを学校へ行かせようとすることでは永遠に解決できないのです。
子どもを学校に合わせるという強制的な「適応指導」で対応することは本質的、根本的な解決にはなりません。

不登校の理由は先生との関係にあり

先ごろ、「不登校の理由は「先生との関係」も要因の一つだった、という教職員が回答した場合と、子どもが回答した場合では16倍の開きがあることが、教育学者・内田良氏の分析で明らかになった」ということが発表されました。

「不登校の理由は先生との関係」だと回答した中学生本人が26.2%だったのに対して、教職員の回答は1.6%しかありません。

教職員が回答した調査結果は、不登校についての国会審議や有識者会議などで、かならず参照されるなど「不登校施策の基盤資料」にもなっているものです。
不登校の理由は「先生」 学校と子どもの認識に16倍の開き(不登校新聞)
鳥取県教育委員会が調査結果として発表した不登校のきっかけでも、「小学校、中学校ともに『不安などの情緒的混乱』『無気力』という”本人に関わる問題”が多く、『(いじめを除く)友人関係をめぐる問題』が続いている。」となっています。
そこには、「不登校の理由は先生との関係」「不登校のきっかけが学校にあった」ということは出されていません。

鳥取県教委の調査で不登校理由は「本人の問題」

平成16年3月に鳥取県教育センターがまとめた「教育資料 不登校・中途退学に関する調査研究-鳥取県における不登校、中途退学に関する実態調査および効果的な指導支援のあり方」では、調査対象小学校23校、対象児童26名について不登校の原因として考えられることの聞き取り調査を行っています。調査への対応に当たったのは担任、不登校担当、学校長等です。(資料18ページ)
これによると、不登校の背景(平成13年度小学校低学年)は、家庭の問題、発達障害の疑い、母子分離不安、過剰適応が挙がっていますが、学校環境や教職員との関係は挙がっていません。

*家庭の問題・・・・保護者自身が抱えている問題が影響していると思われるもの(例:精神疾患 ネグレクト 虐待 等)
*発達障害の疑い・・医療機関から診断を受けた事例は1例だが、そのような示唆を受けたり、子どもの行動観察等から発達障害が疑われるもの
*母子分離不安・・・医療機関、臨床心理士等から診断されたり、またそのような示唆を受けたもの
*過剰適応 ・・・・ 新しい環境の中で、几帳面に真面目に取り組み、息切れ状態にあったと思われるもの

学校基本調査「不登校状態になった直接のきっかけ (小中学校課)」を見ても、その他本人に関わる問題が小学校で28%・中学校で29.5%、友人関係をめぐる問題が小学校で15.5%・中学校で28.6%と高く、教師との関係をめぐる問題は小学校で3%・中学校で1.8%、学校のきまりをめぐる問題は小学校で0%・中学校で4.4%と低くなっています。

「不登校は先生のせいだ」ということが言いたいのではない。大事なことは、認識のギャップを認識するということだ。本人と学校が、まったく異なる「不登校の理由」を思い描いていては、会話さえ成立しない。

不登校「先生が原因」 認知されず 学校調査と本人調査のギャップから考える

不登校の理解に大きな差があることこそ問題の本質

この結果から見えてくることも、子ども本人の訴えている理由と教職員の捉えている理由に大きな乖離があることです。
「教職員との関係」については、「生徒本人は教職員との関係に原因がある」と感じていても、教職員はそのことを自覚していないといえるのです。
ちなみに、「親との関係」や「友人との関係」が理由だと回答した子どもと教職員との開きはあるものの、その差は2倍未満で「学校との関係」の16倍ものさほどは大きな開きはありません。
文科省や教委の「不登校の理由についての本質的な理解がない」と断言してもいいデータなのです。
ここにこそ「不登校問題」の大きな認識の違いが見えてきます。
私が「不登校児童生徒への支援に関する最終報告(案)」って本質の理解ができていないと指摘した意味もここにあります。
不登校の理解と支援のための『あした、また学校で Ⅲ』の実行力を問うにも詳しく書いています。
文科省とNHKの調査結果の違いが大きいという問題、学校の教員がきちんと児童生徒の声を聞いていない、きちんと調査ができていないという見方もできるけど、それだけ学校は限界に来ているといえます。
現場の教員が児童生徒の思いをしっかり聴く時間も信頼関係作りもできない状態にあるということです。
学校というところはとにかく「やらなければならないこと」「やらされていること」が多すぎるのです。そんな中で児童生徒と接するという最も大切なことが蔑ろにされているのです。
子どもたちのために懸命に頑張っている教員もいますが、個人の努力ではもう不可能なレベルなのです。
だから仕方がないで片付けてはなりません。
「学校の先生、ちゃんとやって!」だけではどうにもなりません。大切なことは、情報共有と相互理解です、だから、県民のつどいではみんなで智恵を出し合います。少しでも子どもたちにとって安心できる学校にしていくためにはみんなで「学校を助ける」ということも必要だと私は考えています。
そのために、みんなで集って語り合うために子どもの学びと不登校を考える鳥取県民のつどいを行います。

最も重要なことは不登校の子どもの理解と学校からの初期対応

最も重要なのが、「人として」の初期対応です。ここで「教員としての立場」で対応することは絶対にやってはいけません。
「人として」子どもと向き合い、寄り添うこと。今の子どもの状態に一番大切なことは何かを考え、100%子どもの気持ちを聴く姿勢が重要です。
不登校の子どもたちはなんらかの形で学校や教員に対して不信感を抱いています。
そんな状態で学校から要求を出したり、学校へ行くことを強制したりしてはいけません。
まずは、子どもの心のエネルギーを蓄えることが大切です。
子どもだけでなく保護者に対しても適切な初期対応ができないと、心のエネルギーを蓄えるどころか逆にどんどん減らしてしまうことになります。
こちらには、親御さんと学校の先生へ伝えたいことを書いています。
適切な初期対応の前提として子ども理解が大切なのですが、初期対応の仕方次第で、学校不信になるか学校を信頼できるかが決まります。
この調査結果を見ても、子どもの本音と教員の受け止め方に大きなギャップがあることからも子ども理解が十分ないまま不適切な対応をしていることが見えてきます。
多くの保護者の方と話す中で、長期の不登校状態が続くのも学校の対応のまずさが要因になっていることがほとんどです。
子どもを学校に適応させる矯正指導ではなく、個々の子どもに合わせるように学校が適応する必要があるのだという認識でなければなりません。
そのためには、学校任せにしないで継続的な対話を続けるしかないのです。

学校だけでなく多様な学びの場を作ることが大人の責任

もちろん、学校は楽しくて居心地がいいと感じている子もいます。先生が好きだから学校に行っている子もいます。
その子にとっては、学校は大切な居場所です。
そして、日々の忙しさの中で親身になって子どもたちのことを考え、丁寧に保護者と対面し、授業改善や生活改善に熱心に取り組んでいる者もたくさんいます。その一方で、「すべての子どもに対応するのは大変だ」「しなければいけないとは分かっていてもこの忙しさでは・・・」という半ば諦め状態の教員もいます。
だからこそ、「学校に行きたいけど行けない」という子どもたちに対して学校は何ができるのか、保護者はどう接していけばいいのか、両者が本音で対話を重ねていくことが大切なんです。
さらに、学校へは行かないけど学ぶ気持ちがある子どもたちに、多様な学びの場を作ることが大人の責任です。
それが、「普通教育」「義務教育」です。
こちらに「不登校」を解決する方法を2つ書いています。これで、「不登校」という言葉も日本から消滅します。

参考資料

以下、今回の分析に使った参考資料を載せておきます。
鳥取県における不登校、中途退学に関する実態調査および効果的な指導支援のあり方PDF(鳥取県教育センター)平成16年3月
不登校児童生徒への支援に関する中間報告PDF(不登校に関する調査研究協力者会議)平成27年8月
「不登校に関する実態調査」~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~平成26年7月9日

調査結果の主な特徴
(1)基礎集計編(B調査)
不登校のきっかけは、複雑化・多様化が進んでおり、生活習慣の乱れも高い割合となっている。
学校にいる相談員などの利用が多く、不登校生徒に対する支援体制が整ってきている。
(2)分析編(B調査)
不登校を、無気力型、遊び・非行型、人間関係型、複合型、その他型の五つに類型化した。
一度、欠席状態が長期化すれば、回復が困難であり、「最初に学校を休み始めた」時期と長期化した時期との間の「潜在期間」に注目した対応が必要である。
(3)ケース分析編(C調査)
不登校に対する考え方は、中学校を卒業して5年後現在の状況の満足感に大きく左右される。

「不登校に関する実態調査」 ~平成18年度不登校生徒に関する追跡調査報告書~(概要版)平成26年7月9日

不登校の主な継続理由は、以下のとおり。
「無気力でなんとなく学校へ行かなかったため(43.6%)」
「身体の調子が悪いと感じたり、ぼんやりとした不安があったため(42.9%)」
「いやがらせやいじめをする生徒の存在や友人との人間関係のため(40.6%)」
「朝起きられないなど、生活リズムが乱れていたため(33.5%)」
「勉強についていけなかったため(26.9%)」
「学校に行かないことを悪く思わないため(25.1%)」

不登校に関する調査研究協力者会議
平成28年07月29日 不登校児童生徒への支援に関する最終報告
平成27年09月07日 不登校児童生徒への支援に関する中間報告
不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)平成28年9月14日
児童生徒理解・教育支援シートの作成と活用について(案)PDF

児童生徒理解・教育支援シートとは、不登校児童生徒一人一人の状況を適切に把握し、当該児童生徒の置かれた状況を関係機関で情報共有し、組織的・計画的に支援を行うことを目的として、学級担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等を中心に学校が組織的に作成するもので、児童生徒の状況や支援方法についても形式も載せてあります。

「新しい生活様式」によって、学校に行かない子どもはもっと増える

「新しい生活様式」によって、学校に行かない子どもはもっと増えると思います。それは当然のことです。
文科省や教委の調べによると、不登校のきっかけの第1位は「不安など情緒的混乱」で、第2位は「無気力」。
つまり、「不登校は子ども本人の問題である」と結論づけされています。
しかし、注意してほしいことは、これは「実際に子どもに聞いた理由ではない」「子どもが理由として言ったのではない」ことを知るべきです。
学校に行きたくないの理由は「本人の問題」ではなく「学校制度」と「学校環境」「教員の対応」に問題があるためです。
だから学校を変える必要がありますが、それはかなり不可能に近いと思います。
さらに、「不安など情緒的混乱」や「無気力」になったのは、「子ども本人の問題」ではなく、その要因は学校にもあるという見方をすべきです。
だから今必要なのは、学校以外の場所です。
大人が子どもに対してよくいう言葉が2つあります。
「しなさい」
「してはいけない」という言葉です。
この2つの言葉が子どもを「不安など情緒的混乱」や「無気力」にしていきます。
学校というところはとにかく「やらなければならないこと」「やらされていること」が多すぎるのです。それが無気力状態を生んでいます。ものを言えない人間を作っています。
そんな中で、今、教員が児童生徒と接するという最も大切なことが蔑ろにされているのです。それが「新しい生活様式」によってますます触れ合うことが禁じられています。
子どもたちのために懸命に頑張っている教員もいますが、個人の努力ではもう不可能なレベルなのです。
だから、学校ではない学びの場、人と人がふれあうことのできる場を作っていく必要があります。
「新しい生活様式」を強制するのではなく「新しい学びの場」と「自由遊びの空間」を創っていく必要があります。
この調査をもう一度しっかり見てほしいと思います。

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