新年度がスタートする今、「不登校についての対応」と「学校教育が目指していること」について改めてみんなで勉強しておきましょう。
いよいよこの4月から新しい学習指導要領に基づく「新しい学校教育」がスタートします。
小学校は2020年度から、中学校は2021年度から本格的に始まります。
「不登校」児童生徒への対応については現在の学習指導要領にも明記されていますが、新学習指導要領ではどのように扱われているか見てみましょう。
「小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 総則編」(p.118)より
不登校児童への配慮
「不登校児童については,保護者や関係機関と連携を図り,心理や福祉の専門家の助言又は援助を得ながら,『社会的自立を目指す』観点から,個々の児童の実態に応じた情報の提供その他の必要な支援を行うものとする。」
「不登校児童については,個々の状況に応じた必要な支援を行うことが必要であり,『登校という結果のみを目標にするのではなく』,児童や保護者の意思を十分に尊重しつつ,児童が自らの進路を主体的に捉えて,『社会的に自立することを目指す』必要がある。」
「相当の期間小学校を欠席し引き続き欠席すると認められる児童を対象として,文部科学大臣が認める特別の教育課程を編成する場合には,『児童の実態に配慮した教育課程を編成する』とともに,個別学習やグループ別学習など『指導方法や指導体制の工夫改善に努める』ものとする。」
「中学校学習指導要領(平成29 年告示)解説 総則編」(p.116)も同じ内容です。
小学校と中学校では違いはありません。「不登校児童」が「不登校生徒」に変わっているだけです。
「不登校児童生徒」へのの配慮について、学習指導要領でもかなり多くのページを使って明記されていますが、このことを知っている人は少ないと思います。保護者はほとんど目にすることはないと思いますし、現場の教員もきちんと読んでいる者はほとんどいないのではないかと思います。
これを読んで児童生徒の対応をきちんとしている教員は素晴らしいです。
現在の学校教育が目指している「不登校」児童生徒に対する「スタンダード」とは?
「学校へ行けない人を学校へ行けるようにすることはそんなに悪いことなの?」と疑問を感じる人があるかもしれません。
もちろん、「学校へ行けるようにすること」もひとつの方法ではあります。その前提として「児童や保護者の意思を十分に尊重」することが求められます。
しかし、これを読んでもわかるように、学校教育の目指すところは「学校復帰のみ」ではなく「社会的自立」をめざしています。
社会的自立のための手段の一つが学校に行くことであり、さらに文科省は「学校以外の場での多様な学習活動の重要性」も認めています。
これが、現在の学校教育が目指している「スタンダード」なのです。
その根拠は文科省の数々の「通知」や学習指導要領にあります。
「登校という結果のみを目標にするのではなく、社会的に自立することを目指す必要がある」というのは、現行の学習指導要領にも明記されていて、それをめざして現在の対応がされている(はず)なんです。
「はず」なんですが、実際はどうでしょうか?
課題は学校以外の「選択肢」が整備されていないこと
まずは、この「スタンダード」が広まり周知徹底されることが必要です。
しかし「学校へ行かなかったらどこへ行くの?」という課題が残ります。
学校以外の「選択肢」が整備されていないために、「自宅に居るしかない」という子どもたちもたくさんいるのが現実です。
子どもの選択肢、行き場所がなければ「学校復帰のみ」になってしまいます。
鳥取県内にも支援センターやフリースクールなどでは出席扱いや授業料の助成もされるようになっていますが、まだ十分とはいえないのが現状です。
引き続き鳥取県民のつどいなどの機会を通じてみなさんといっしょに考えていきたいと思っています。
4月以降も「不登校」の解決に向けて、さまざまな人たちや関係機関と連携をしていき、ひとつずつ課題をクリアしていきたいと考えています。
新学習指導要領
小学校学習指導要領 解説(PDF)
中学校学習指導要領 解説(PDF)