武蔵野大学国際総合研究所研究主幹 鎌江伊三夫氏の解説です。この解説も信頼度が高い内容だと思います。
「感染爆発の重大局面」とはどこまで重大なのか。私たちは今の事態をどう理解すればよいのか。
感染経路の不明者が出るわけは?
新コロナの感染拡大が不可避の中、感染者数の爆発的増加をどう防ぎ、どう準備すればよいのか?
テレビなどで無責任なコメンテーターが自分の憶測で勝手なことを言っていますが、それこそ「害」です。
無責任なメディアが分かりにくくてあいまいな表現をして、その結果として「うそを拡散」させています。
正しく知ること、正しく恐れることが大切です。正しく恐れることです。注意しすぎることはありません。
そして今こそ自己判断を問われているときはないと思います。
コロナを決して甘く見ちゃいけません。
すでに薬局の店頭ではマスク品切れの現象が起こっている。マスクで予防を考えるのは自然ではあるが、その医学的有効性は必ずしも確立されていない。ちなみに、米国の疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)のガイドラインでは、咳やくしゃみのある人には、他者への飛沫感染を防ぐためにマスク装着が推奨されている(いわゆる「咳エチケット」)。しかし、飛沫感染予防のためのマスク装着は、ハイリスクの状況以外では、一般に推奨されていない。口と鼻を覆うマスクでは、目からの飛沫感染を防げないからだ。
公衆衛生上の政策や戦略決定には、検査や治療法などの医療技術を科学的・客観的なデータに基づいて分析・評価し、しかもその論拠を明確にすることが必要である。PCR検査の例でもわかるように、判定結果の正しい解釈がその第一歩となる。そして、そのような科学的知見に基づいて、さらに社会的、倫理的、法的、あるいは経済的、政治的視点などの学際的な視点を総合して、最終的な政策決定を行っていかなければならない。
新型コロナウイルス感染症との闘い ー 知っておくべき検査の能力と限界
外出自粛を求められた週末の街は幸い平静さを取り戻したが、果たして「感染爆発の重大局面」とはどこまで重大なのか。
感染の増加ペースを遅らせば、確かにピークをむかえるまでの時間は稼げるが、ピーク時の感染者数も減らせるというのは希望的観測に過ぎないのではないだろうか。
油断できない長い戦いが続くことは覚悟しなければならないが、今が「重大局面」の根拠はあいまいに見える。例えば、図1は、3月のPCR検査陽性率と推定有病率の日変化を示す。このグラフを見ると、月初めの不安定さは除き、PCR検査の保険適用以降、推定有病率は6%程度でほとんど変化していない。つまり、このように有病率が一定であれば、感染は指数関数的に増えていき、いずれ爆発的増加のイメージに合致するような時点がくると解釈するのが論理的である。
それでは、感染者数の爆発的増加をどう防ぎ、どう準備すればよいのであろうか。
医療だけでなく社会・経済的対応として、急性期には①被災者(広く、企業活動上の被害も含め)の当面の社会的・経済的支援、そして慢性期での②復興のための景気拡大政策が必要である。現在は急性期であるため、景気拡大策をとる時期ではない。
感染制御の主役は、やはり個人だ。つまり、他者からウイルスをうつされなければ、あるいは他者にうつさなければ感染の連鎖を断つことができる。そのためには、合理的な感染リスクの認識と自制的な行動が求められる。何よりも、買いだめや銀行の取りつけ騒ぎのような、社会的パニックを引き起こさない冷静さが必要だ。
スペイン風邪は、当時、治療薬もワクチンもないのに、結局は終息に至った。歴史上おそらく最も恐れられた天然痘ウイルスですら、人類を滅亡させることはできなかった。新コロナ・パンデミックも、必ずいつか終息するはずである。その思いを希望の灯として、今はできる限りの予防に努め、自然の嵐が過ぎるまで耐え忍ぶ時であろう。