クラスジャパン・プロジェクトは「学校復帰させる」ためというのが気になるにも書きましたが、その表現が非常に気になりました。
斎藤環さんもツイッターに投稿していますが、まったく同感です。
クラスジャパンプロジェクトの中核をなすらしい原田メソッド。検索してもビジネスマンの成功モデルの話しか出てこない。そんな自己啓発モデルなら不登校児支援には水と油。これまでの不登校支援をめぐって蓄積されてきた知見を完全に否認するかのようなプロジェクトに賛同する自治体があることが驚き。
「再登校をゴールにしたら抗議が殺到する」という当然の帰結を予測できなかったのは、不登校支援の経験者が皆無か不登校について何も知らないか驚くべき鈍感さかその全部かという想像しかできないのがつらいところ。この釈明文なんて出オチみたいなもんじゃないですか。
このプロジェクトの「学校復帰」を目標にしていること、「真意」をあえて説明していることに、私はとても違和感を感じます。
なんだか学校に行っていない子どものことを改めて「悪い子」「社会の損失を招いている」「だから学校に復帰させよう」としか受け止められません。
不登校支援の本質が全く理解できていないんですよ。
3月7日には島根県益田市で調印式があったそうですが、どうなるのでしょうか。
『クラスジャパン・プロジェクト』×島根県益田市 協定調印式
クラスジャパンプロジェクトとは全国20万人の長期欠席中の小中学生の学校復帰プロジェクト
自宅に居ながら、インターネット上のクラスを通じて、日本中の友達と学びあい、つながることから始まる学校復帰のストーリー
ネット上で全国の友人とつながりを持つことで孤立しないで友と学び合う喜びを実感する
『それが、クラスジャパン』
全国の小中学生の不登校生達が学校復帰まで全国の「自治体」「首長」と共にサポートするのが家庭・地域・企業が一体となった支援チーム
外的な要因等があり、必ずしも学校復帰を望まない場合でも、そのような環境が実現すれば、登校していない期間の不安感を少しでも払しょくし、義務教育終了時の進路の幅を狭めないことにもつながります。これが、我々が言う「学校復帰」の意味です。
言葉のもつイメージによる影響力はものすごいです。
あえて「我々が言う『学校復帰』の意味」という表現をしなければならない事情も気になります。
だから、言葉は慎重に使う必要があります。
また、クラスジャパンですべての子どもたちに対応できるわけではありません。
「どんなに嫌なことがあってもやっぱり今の学校に行きたい」と強く願っている子どもにとっては「学校復帰」が目的となりますが、ただ単に戻ればいいのではなく、学校環境の調整が前提になります。
そして、「学校復帰」のみが子どもにとってベストな形ではありません。
子ども本人が「行きたい」「やりたい」ということを実現することが私たち大人の役目であり責任です。
それが、教育基本法第4条 (義務教育)に「国民は、その保護する子女に、九年の普通教育を受けさせる義務を負う」と示されていることです。
「九年の普通教育を受けさせる義務」は国民にあるのです。
その実現の方法は「学校復帰」だけではありません。「学校復帰」も含めていろいろな「普通教育」が受けられる場を創っていくことが大事なんだと思います。
さらに、九年の普通教育が終点ではありませんから、その後の進路につながる環境整備も必要です。
ただ単に小中学校の9年間を過ごすのではなく、それを終えてからの課題もたくさんありますので、これを一面だけで一部分だけ切り取るのではなく、生涯に渡る総合的な視野に立って9年間を位置づける必要もあります。
個人的には、子ども個々の願いやニーズに応えるための「ひとつの選択肢」だと考えたらいいかなと思っています。
「学校復帰」を目標にしないと公的な認可がされないという事情もあるのでしょうが、釈明文を出してその解釈までも変えてしまうやり方は賛同できません。やはりどう考えてもゴールの設定がおかしいです。
これからもクラスジャパンの取り組みに注目していきます。
クラスジャパンのミッションに関しての真意(PDF)