発達障がいのある高校生徒数の現状
文部科学省が平成14年に実施した調査によると、発達障がいのある子どもは全体の6%程度いるといわれています。
しかし、これらは、各学校が把握している数をまとめたものなので、実際にはもっと多くの生徒がいると考えられます。
発達障害の診断を受けていない、いわゆる「グレーゾーン」の生徒はカウントされていませんので、もっと多いと思われます。中には診断を受けていない、もしくは診断されていても学校が把握していない生徒も相当数いるものと思われます
鳥取県の高校では、発達障がいであるとの医師の診断が出ていると申し出ている生徒数は、平成27年度は291人(約1.8%)です。
県教委は、この数値を「少数である」(全国の率と比べて)という認識ですが年々増加していますし、人数の多い少ないというのではなくこれだけの生徒がいるという理解のもとで高校での特別支援教育を行っていくべきです。
高校における特別支援教育への取組の流れ
県としての特別支援教育の取組みについては、今年の4月にはじめて「高等学校における特別支援教育の充実を目指して」というリーフレットが作られました。
その中で、高校における特別支援教育への取組の流れなどについて、紹介しています。
・高校で特別支援教育を必要とする生徒に関する支援の流れ
・「個別の指導計画」や「個別の教育支援計画」を作成と見直しについて
・進路指導、就労支援についての関係諸機関との連携
・進学指導においては各高校の入学案内や選抜実施要項なども参考にしながら生徒の指導・支援の充実を図り、保護者へも情報提供する
など、具体的な取り組みを例としてあげながら特別支援を必要とする生徒への対応の仕方や支援方法について書かれています。
これまでは、各高校に任されていたものが、県をあげて高校での特別支援教育にきちんと取り組む決意の表れだと思っています。
高等学校における特別支援教育の手引き
また、平成25年7月には「高等学校における特別支援教育の手引き」が作成、情報公開されています。
この手引きには、指導・支援のあり方等のほか、鳥取県立高校で平成23年度から2年間実施した「高等学校における発達障がいのある生徒支援事業」の拠点校3校の取組成果等もまとめて掲載してあります。
しかし、残念ながら高校での特別支援教育は理解と熱意のある教員のいる学校とそうではない学校との開きが大きく、特に入試の際の配慮は十分だとは言えません。
一部の私立の高校では入学前の相談を受けていたり、中学校との連携をとっているところはありますが、県内で申し合わせた支援体制ができていないというのが現実です。
発達障がいのある生徒の把握
中学校から高等学校への進学にあたり、個別の教育支援計画をはじめ、必要とされる個人情報が適切に引き継がれることが必要です。
しかし、県個人情報保護条例により、中学校と高等学校の情報共有については、本人同意がとれたもの以外は、原則として禁止されています。このような観点から、高等学校では本人又は保護者の申し出を待たなければならない状況があります。
発達障がい者支援法第5条においては、発達障がいの早期発見は市町村の役割とされていますが、必要とされる個人情報が高等学校に引き継がれなければ、高等学校における特別支援教育は、非常に困難なものとなります。
※「個別の教育支援計画」は、原則として書面を本人が保管し、本人が関係機関に届け出るものであり、早期の普及が望まれます。
保護者の皆様へ
各学校ではできるかぎりの対応をさせていただいております。
また、各学校ごとに機会を捉え、保護者のみなさまに情報提供のお願いをしております。気になることがありましたら、できるだけ早目に、担任あるいは特別支援教育担当者等へお申し出ください。
とあるように、学校側としても保護者からの情報提供を待っています。
言い方を変えれば、「保護者の要望や提案があれば手立てをする用意はできている」ということです。
高校での特別支援教育の取組みを推進していくために
保護者の要望などは個人的に高校へ伝えたり、特別な支援を必要とする子どもたちの明日を語る会などでも改善の要望を出していますが、実際の学校現場での対応はまだまだ行き届いていないというのが実態です。
明日を語る会は関係者が一堂に集まって話し合う唯一の場なのですが、この会のことを知らないという人も多いので、もっと広く呼びかけていきたいです。
県教委や地教委単位で特別支援教育を進めていくことはもちろん、いろいろな機会をとらえて保護者が児童生徒の状況や願いを伝えていくことによって、高校入試の受験方法も多様化され、高校生活も学習対応の仕方も変わっていくと思います。
ようやく「高校での特別支援教育のリーフレット」という「形」はできましたが、実態は伴なっていませんのでそれを各学校で具体的に推進していくには、特別支援教育についての学校の理解および保護者間の協力も必要です。
現状では、高校に入るために中学校の勉強、中学校での勉強についていくために小学校の勉強、さらに小学校で困らないようにするために就学全の学習や訓練が行われています。
これまでは、社会的に発達障害のある児童生徒は排除、隔離されるという特別視される傾向が強かったため、個々の能力を発揮で来ていないことが問題でした。
彼らの特性を活かすことができれば、社会にとっても有力な子どもたちになります。
受験の方法を含めた高校教育の在り方が変わることによって、彼らの力が思う存分発揮でき社会貢献につながっていきます。
「高等学校における特別支援教育の充実を目指して」リーフレット(PDF)
特別な支援を必要とする子どもたちの明日を語る会
※今年は各地区で7月に行われましたが、まだ概要の報告待ちです。